今回ご紹介する
ヒストリー・オブ・ザ・ワールド
は、1991年発表から1993年のアバロンヒル・ゲームズ(AH)版(当社でも和訳付きで扱っておりました)などを経て、時代に合わせて版を重ねてきたゲームです。
“A Brief History of the World”だけ無い……
拡販に共通である内容としては、ゲームは幾つかの「時代=ラウンド」に別れており、プレイヤーは人類史に登場した帝国(とか民族集団)をドラフトで受け取り、受け持った帝国の歴史上での登場順に手番を得て、その勢力をマップ上で広げて行くことで地域を支配し、その手番の最後に得点していきます。
ここはあんまり変わらないし、オーソドックスなシステムなのであまり語らないとして……
時代ごとに各地域の得点比率は異なり、その地域ごとの占有度で点数が変わります……
優勢:2倍
(3スペース以上あって他のプレイヤーより多い)
支配:3倍
(すべてのスペースにある)
この画像だと、黒は南ヨーロッパに存在、赤は南ヨーロッパで優勢、オレンジは北アフリカを支配。
基礎の点数は地域・時代ごとに異なる。
時代とともに重要な地域が移り変わっていく。
優勢:2倍
(2スペース以上で他のプレイヤーより多い)
支配:3倍
(3スペース以上で他プレイヤーがいない)
この例だと北アフリカで青が支配、南ヨーロッパで黄が優勢、青と赤が存在。
版によって支配度の定義が変わっています……旧版をお持ちの方は、ここを混同しがちなので要チェック!
基礎点もAH版から時代が減ったりしたぶん違うけど、システム的には同じ。
時代によって配点が変わる。
各帝国の国力(使える軍隊コマ)は歴史的評価で決まっているので、国力を超えた無理な版図拡大はできません。
また、過去に受け持った帝国は拡大期を過ぎてしまったためそれ以上は大きくなりませんが、得点にあたっては現在の帝国ではなく各ターン(帝国)終了時の「そのプレイヤーごとの占有度」を見ますので、攻撃側が有利なシステムも相まって、「過去の帝国はいつかは滅ぶ」くらいの感じで心置きなく征服し、その後新興の帝国に征服される……ということになります。
また地域の支配のために帝国の拡大に当たっては侵略することにになりますが、過去の自分の帝国も支配の度合いの為に数えるため、他プレイヤーの帝国の侵略に注力するならドラフトで自分にとって有利な地域(例えば過去の自分の帝国がある、他のプレイヤーを登場順的に蹂躙できる……など)を得る方が優位に立てるので、お互いに盤面で殴りあうのは得点行動的にはあまり比重が大きくない感じです。
(歴史的にローマが地中海世界を統べ、モンゴル帝国はユーラシアを席巻し、大英帝国は陽が沈まぬ帝国になったのは事実なのですが、この辺りの強い帝国を取れればよいのかというと、それまでの自分の帝国がどこを押さえることができたのかも重要なのです。)
人類最古のシュメール文明から始まって、20世紀最後の帝国であるアメリカ合衆国までの5000年にわたる歴史を遊ぶ、史実と異なる世界となるのか、はたまた史実の流れは大きくは変わらないのか……何度やっても同じ展開にはならない、ドラフトとエリアマジョリティのゲームとなっています。
歴史好きで多人数ゲームが好きな人にはかなりオススメなゲームとなっています!
前置きおしまい。
さて、それでは過去の版と新版での変更点を紹介すると……
時代の数自体は5時代で、Z-MAN版と同じ(AH版では7時代)。
登場する帝国は若干変更されています(時代区分が変わったり、順番が変わったり、イベントで登場する帝国になったり)。
各版のカードの比較……ちょっとずつ数値評価などが異なる。
これは攻防ともにダイスを振っていたものを、シンプルに通常の侵略は必ず成功し、防御地形にいる場合は両兵力を盤面から取り除く……というもの。
ダイスを振るシステムだと侵略に不確実性があって、不測の事態に対しての対処力が求められるのですが、プレイ時間は伸びがち。ダイスを使用しない場合は兵力をどう散らして、どうすりつぶすかだけの判断なので、かなり時間短縮に貢献しそう。
新たに加わった「名声」は、「イベントや侵略により過去の帝国の駒(守備隊)が取り除かれた」、「他の帝国からの侵略を阻止した(ダイス使用の場合で防御側が侵略側のコマを取り除いた)」、「ターン最後にゴールド(=勝利点)が一番」の場合に得るというもの。
名声を得た場合、名声タイルの山札から名声タイルを名声トラック上で進めることができ、4スペース目に到達した名声トークンは使用することで様々な恩恵を得ることができます。
ただし、4スペース目の名声トークンは持越し出来ないので、要注意……これにより侵略されたプレイヤーも続く手番で若干有利に動けるため、ゲームとして戦略性が広がっています。
得点に関してはかなり変更が成されており、実は重要な変更ポイント。
以前の版をプレイしていた方は時代ごとの得点のことは忘れてください!
あと今回得点はゴールドです(Z-MAN版、AH版では勝利点/VP)。
地域名に記載されているローマ数字のラウンドに、その地域の地域トークンを袋に追加していきます。
最初の時代(ラウンド)は「I」の地域……南ヨーロッパ、北アフリカ、インド、中国の4地域各3枚。あと8地域が存在しますが後から入ることになります。
時代Iではこれら15枚が袋に入ります。
ゲーム開始時、これを各プレイヤーが1枚ずつ引いて、裏向きで自分のボードに置いておきます。さらに1枚、ゲームボード上に表向きで1枚、ラウンド1のスペースに置きます。
つまり、これは袋からひかれることは無い地域トークンということになります。
時代II以降は地域トークンをドラフトします。
新たに活性化する地域トークンを袋に追加し、ゴールドが一番多いプレイヤーが人数+1枚引いてその中から1枚選んで自分のボード上に裏向きで置き……
次にゴールドの多いプレイヤーに渡し選んでもらいまたその次に低い人に渡し……
最後の人は1枚選んで自分のボードに置いた後、残った1枚をゲームボード上に裏向きで置きます。
つまり、最後に置かれた地域トークンの正確な情報は一番ゴールドが低い人しか知らないわけです。
さて、各手番の得点(ゴールドの獲得)とこの地域トークンの使い方の件ですが……
まず、帝国の領土によるゴールドは活動中の地域で、現在の帝国だけが獲得します!
つまり、過去の帝国は支配に数えません。
まだ焦点が当てられてない……例えば時代Iに、時代IVに活性化する南米に(何らかの方法で)帝国の支配が及んでいてもゴールドは得られません。
「優勢」(=その地域の土地が2つ以上、かつ他のプレイヤー/過去の自分の帝国よりも多い)で4ゴールド
「完全支配」(=その地域の土地が3つ以上、かつ他のプレイヤー/過去の自分の帝国が無い)」で6ゴールドとなります。
これ、時代による傾斜はなし。
画像の例だと、黒の帝国は「存在」しかしていない。
そしてターンの終了時に帝国はすべて過去の帝国となり軍隊駒を寝かせて守備隊にするのですが……
手元にある任意の枚数の地域トークンを公開して、その1枚につきその地域にある「守備隊(=過去の帝国)」を参照してもう一度地域の得点と同じように得点します。
各時代の重要度は各プレイヤーがコントールできるワケです。
この例だと、黒の守備隊がインドを支配しています!!
2枚使って2回分、12ゴールド獲得です!
なお、ゲーム終了時にゲーム終了トラックに置かれた地域トークンも解決することになるので、秘密の情報を知っている人はそれを意識するのも重要な要素となっています。
このあたりはシミュレーションゲーム的なアプローチというより近年のユーロゲームっぽいアプローチ。
地域トークンのルールによる得点方法の修正に伴い、帝国カードのドラフト(とイベントカードの確保)のルールが変わっています。
AH版では今までの「戦力が低い」/「点数が低い」/「直前の時代のカードのナンバーが小さい」順に、帝国を1枚引いてそれを裏向きで自分のものにするか、まだ帝国を受け取っていないプレイヤーに裏向きで押し付けるかを決めます……
既に押し付けられている人は誰かに押し付けるだけ。
イベントは完全ランダムで、各時代の物を1枚ずつゲーム開始時にすべて引きます。
Z-MAN版では点数が低い順に(得点トラック上で同じ場所に止まれないので同点は無い)、その時代の帝国カードの中から1枚選んで裏向きで自分のものにし、残りを次に低い人に渡していくだけ(普通のドラフト)。
イベントカードはその逆で、点数の高い人からその時代のイベントカードを同じ要領で1枚手札にします……
帝国カードとイベントカードのドラフトは同時に行ないます。
今回のRioGrande版ではまず上記の地域トークンの選択を行った後に、その時代のイベントをランダムに1枚ずつ配り(オプションルールで通常のドラフト在り)、次に点数(=ゴールド)が低い順に表向きで並べられたその時代に登場する帝国カードの中から1枚選んで確保します(オープンドラフト……ですがオプションルールでZ-MAN版同様にドラフトするルールもあり)。
この根幹の1つとなるドラフトルール、実は全バージョン全部バラバラ。
(選択ルール無しだとイベントはランダム、帝国はオープンドラフトなのでプレイ時間短縮方向の修正になています。)
他にも細かい変更がされているので、ゲームの根本は変わっていないけど、総じてかなり今風のユーロゲーム方向に調整されていて新鮮!
時を超えてプレイされ続けている、時代に試され続けてきた内容は保証済みなわけなので、従来のファンの人にも、新たにこのゲームを知った人にもぜひプレイしてほしいゲームとなっています。
ヒストリー・オブ・ザ・ワールド
プレイ人数:2-6人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:30分/人
製作:RioGrande Games
デザイン:スティーヴン・ケンダル、フィル・ケンダル、ゲイリー・ディッケン
イラスト:Marco Primo
価格:16,500円+税