わが呼び声を聞け『サンクトゥム』


ビデオゲームをボードゲームに落とし込むという試みは過去にもいくつか行われており、当社扱いですと『アドレナリン』(FPSテーマ)、『ケンブルカスケード』(縦スクロールシューティング)などがありますが……

サンクトゥム

はハック&スラッシュのデジタルゲームをテーマとしたボードゲーム。

かつて地上に現れた悪魔マルガザールを封ぜし都市、サンクトゥム(聖域)。
幾百年の時を経て封印されし悪魔が復活した……愚かなる王が、封印を破ったのだ。
集いし英雄たちは、それぞれの目的を秘め、今や悪魔が跋扈するなかサンクトゥムを目指す!

といった感じの背景となっており、各プレイヤーは自分の目的のために一路サンクトゥムを目指します。
つまり、協力関係にはないしむしろ先に悪魔を倒したい人たちばかり。

スレイヤー!

部族に伝わる伝承、そして己の強さの証のために!

アウトロー!

愚王による毒殺刑により体をむしばむ毒。その治療法を探すために!

ダンサー!

追放されし愚王の姉が、玉座を再び取り戻すために!

ハントレス!

神々の加護を受け、焼かれた故郷の復讐のために!
……エルフ、なんですぐ村焼かれるんだ。

キャラクターの能力

各キャラクターは個別のボードで状態を表します。

フィギュア……はとりあえずここに。

最初の戦闘ダイスは2個。

激情タイルは使うとダイスの振りなおしができる……これは表向・使用可能面を上にしておきます。

右には技能テーブルがあり、各キャラ固有の技能カード/タイルが置かれています。

この状態ではまだ解放されておらず、

敵を倒すことで上に乗っているジェムを上の列に移動させ、技能タイル上から無くすることで解放できます。

ただし、下の技能を先に開放すると、上段のタイルにジェムが乗るので解放しにくくなります。このやりくりがゲームのポイントの1つ。

また、このジェムは対応する色(赤/青/緑の3色……白はワイルド)のアイテムを装備するためにも必要となります。

つまり技能開放すると強いアイテムを装備できるスロット(?)も解放されるわけです。

ゲーム開始時から使用できるジェムは白1個。

なお、このジェムを使う=何かを装備すると戦闘のダイスが1増えます。

ボード真ん中には獲得した装備を置くことになります。

もちろん、頭には兜が、胴には鎧が、足には脚甲が、腕には籠手が、手には武器しか装備できません。

体力(赤)と気力(青)は装備したアイテムを発動するリソースです。

こちらはアイテムを装備するともらえたり、技能を解放するともらえます(乗っているタイルの上からこちらに置かれる)

《ウォーアックス》は左のスロットに体力を置くことで、ダイス目の修正が±2できるのだ。

フル装備状態。

ここで各プレイヤーとも、各々の能力を把握しておいたほうが良いですよ……
少なくとも成長方針は立てておきましょう。

ゲームの流れ

プレイヤーは手番になったら「移動」「戦闘」「休息」を実行するだけ。

移動
「移動」を選んだら、先頭にいるなら1マス移動するか……

もしくは先頭でない場合は今先頭のキャラクターの1マス先に移動し……

記載されているデーモンを出現させ……

そして何組かあるデーモンのセットのうち、何れか一つを選んで自分のボードに置く(これは何を表しているかというと、デーモンに追いかけられているのです)。

デーモンは強さのランクがあり、あとのステージほど強くなっていきます。

ダイスのアイコンはそのデーモンを倒すのに必要なダイスの出目。
下の血のアイコンは、デーモンを倒さなかった場合の反撃で来るダメージ数。

デーモンの裏は同じ色の装備であり、表面から見てもどの種類のアイテムを持っているかはわかります。
なお、装備のためにはこの色のジェムが必要になります……緑のアイテムなら、緑のジェムを使用できるようにならないと装備できないわけです。
つまり、欲しい種類のアイテムを取るにはそのアイテムを持つデーモンを、そしてそのアイテムの装備のためにはその色のデーモンを、この移動の時に取る(追いかけてもらう)必要があるのです。

右のジェムのアイコンは倒したときにどれだけジェムを移動できるかというアイコン。緑3個なら緑のジェム1個を3段上げたり、緑のジェム3個を1段ずつ上げたり、緑のジェム1個を2段+1個を1段上げたりできます。

つまり、解放する技能をうまく選ぶには、その色のジェムを上の段に移動できるデーモンを選ばなければならないわけです。

……と、ここで気が付かれたと思いますが、各プレイヤー間での駆け引きで一番重要なのはこのドラフト要素

あなたの欲しい種類のアイテム、成長させたい色のジェム、既にもってて装備したいアイテム等々は全てオープン情報ですので、自分の欲しいデーモンは取りつつ、適宜他のプレイヤーの妨害はしていく必要があります。目に見えるインタラクションではありませんが、結構大事。

なお、これらデーモンは「戦闘」を選ぶまではプレイヤーキャラクターを追いかけてきているので、何体引き取ってもOKです。

戦闘
「戦闘」を選んだら、自分のボード上に置かれているデーモンとの戦闘が始まります。
ロール前にポーションがあれば飲んで気力・体力を回復し=埋まったスロットを復活させる。

そしてダイスをふる

出目を割り振りますが……

その前に気力・体力を装備しているアイテムにのスロットに割り振って、出目の修正をしても構いません。

ダイスがすべて置かれたデーモンは死亡……


中途半端な場合は、ダイスが置かれたスロットに負傷マーカーを置いてその出目アイコンは埋めてしまいます。

生き残っているデーモンから反撃が来ます。

血アイコンの数だけダメージを受けます。

この時気力・体力を装備しているアイテム(防具)のスロットに割り振って、ダメージを軽減しても構いません。

受けきれなかったダメージ1点につき、負傷1を受けます(初期生命点は10です)。

そして倒したデーモンのレベルだけジェムを移動させ……

裏返してアイテムにし、収納袋(ボード上のアイテムカード置き場)に置いておきます。

アイテムは獲得しただけでは、装備はできない点に注意を。装備のためには休息が必要なのです!

休息
「休息」……はとりあえずデーモンがボード上にあってもできます。お休み中は遠慮してくれるデーモン。
「休息」を選んだら、装備に置かれた体力と気力をプールに戻します。

アイテム袋にあるアイテムを、解放されたジェムを使って装備できます。
休憩をしないと装備はできないので、いつかは休憩しないと自身の強化ができません。

いらないアイテムを捨てて、ポーションを貰います(なおポーションポーチは4スロットしかありません)。

その後、功績(「一番最初に技能3枚を獲得した」、とか)のチェックをし、鉱石トークンを獲得します。これは最終決戦時に使えるボーナストークンですのであると有利です。

このように、これらのアクションを選択し、実行しつつサンクトゥムを目指します。
ゲームのボード(ステージ)によっては追加のダイスを得ることができ、とにかく敵を選び、戦い、己を強化していきます。

プレイ的に重要なのは、デーモンのドラフトと、休息のタイミング。

何しろ「移動」は戦闘にいるキャラクターの1マス先に移動してしまうので、あまりに頻繁に「デーモンを倒して」+「休息」を選んでいると、先に行くプレイヤーよりもドラフトの機会が少なくなりますし、欲しい種類のアイテムや色のデーモンが手に入らなくなります。よくよく他のプレイヤーが何をするかは考えたほうが勝利に近づくでしょう。

……こうして、サンクトゥム市外壁にたどり着いたら、最期のデーモンの選択をし、自分のボードのデーモンをすべて倒すことで市の中に突入できます。

そうしたら、あとはデーモンロードとの決戦ステージが待っています。
この時、他のプレイヤーはすぐに突入しなくてもよいのですが、遅くなればなるほどデーモンロードの「最初の一撃」が強力なものとなります。

全員がサンクトゥム市に突入したら、後はデーモンロードとの決戦を各自行います。
今までの成長の成果をそれぞれ証明する時です!!

デーモンロードは、5枚のデーモンロードカードと、その間にある猛威カードという複数のカードで表されています。
表になっているのはデーモンロードカードだけで、あとは個々のプレイヤーが戦闘をしていくだけです。

今フィギュアが置かれているカードからダイスを割り振り撃破したら次のカードに移動。

猛威だったらイベント発生。割り振るダイスがまだあれば、割り振ります。

撃破したらさらに右に。

割り振るダイスが無くなったら、今度は反撃。見えているダメージアイコンの分だけ負傷します(もちろん防御可能)

戦闘ラウンドの最後、最初に決めた難易度によってデーモンロードの憤怒を解決します。

難易度がノーマルだと最初は2枚、次の憤怒は1枚……
これがインフェルノだと、最初は5枚、次は4枚、その次は3枚……と言った感じでとんでもない反撃をしてきます。

デーモンロードが出現したら、もはや移動も休憩もできません。
ひたすら戦闘を繰り返してください!

全員が勝利する(デーモンロードの最期のカードを倒した)か死亡するかしたらゲーム終了。
生き残った中で生命点が最も高いプレイヤーが勝者です!
(全員死亡した? 倒したデーモンロードのカードが多い人が一応勝者です……)

ゲームのルール自体はシンプルで、ダイスでスカッと戦闘、成長と技能コンボ、獲得アイテムの能力スロットやりくりなどなど考え所はありつつも他のプレイヤーの邪魔が(あまり)入らないストレスフリーなハック&スラッシュのデジタルゲームの要素のアナログゲーム的再現デザイン手腕は見事。

ルール文量は多いのですが、基本的なシステムはさほど難しくはありませんので、アナログゲーム初心者だけど「ディアブ□好きなんですよね~」とかいう人をお誘いするのもよいですし、プレイスタイルも、周りのプレイヤーの動向を気にしないで手なりでプレイするもよし、他のプレイヤーの盤面を見つつ、デーモンのドラフトや休息タイミングをみっちり考えるもよし。
テーマにひかれるのであれば、確実に楽しめると思いますので強くお勧めいたします。

サンクトゥム
プレイ人数:2-4人(1人プレイルールもあります pdf)
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-100分
製作:Czech Games Edition
デザイン:フリップ・ネドゥーク
価格:6,000円+税